2004年11月7日に横浜で開催された
第87回日本美容外科学会において
「片側乳房発育不全(ポーランド症候群)に対する再建手術 」について発表しました。


当院では、整容(美容)目的の豊胸術や乳房縮小術などを主に行っておりますが、生まれつき片側の乳房が発達しないポーランド症候群という先天的な疾患による乳房発育不全に対する再建手術にも取り組んでおります。
ここでは、2004年11月7日に横浜で開催された第87回日本美容外科学会において発表した症例をもとにご紹介いたします。

ポーランド症候群とは、非遺伝性・先天性の、片側胸郭(肋骨や肋軟骨あるいは大胸筋などの胸筋群)の欠損および乳房の発育不全を特徴とする疾患群で、同側の手指の奇形を伴う場合もあります。発生頻度は、7,000人から30,000人に1人(男女比3:1)といわれております。

主な治療法としては、胸郭の変形がある場合には骨切り術や肋軟骨あるいはシリコーン・プロテーゼの移植といった再建が必要で、思春期以後の乳房の大きさや位置の非対称がある場合には後背筋や腹直筋などの皮弁や組織拡張器(ティッシュ・エキスパンダー)、バッグ・プロテーゼなどを用いた再建が必要となります。
ただ、乳房の場合、皮弁を用いた再建では、手術手技はもちろん術後の皮弁管理など術者の熟練と高度な設備が必要となり、また、手術による瘢痕(傷跡)が大きく残ることが整容的にも問題になります。

今回の症例は29歳女性で、右乳房の発育が思春期以後みられず、3回の経産による左乳房の肥大および下垂が伴い、左右の非対称がありました(図1)。



図1

乳幼児期に何らかの胸郭に対する手術を受けられたらしく(当時海外に居住し、詳細不明)、左側の前胸部および側胸部には8cm程度の術創があり、同時に瘢痕形成も希望されておりました。

方法としては、左乳房に対してシリコーンバッグ・プロテーゼを用いてボリュームを出すと同時に、右乳房に対しては逆に縮小術を行うことで左右差の改善を目標としました。
実際の術式は、左側は腋窩部および側胸部瘢痕より大胸筋膜上にアプローチし皮下ポケットを作成、240ccのバッグを挿入し、右側はMcKissock法(乳輪周囲皮膚および乳腺・脂肪組織を切除し、乳頭乳輪部の血行は上下の真皮弁に求める乳房縮小術の術式の一つ)により縮小しました。

一般に、バッグ・プロテーゼのみでのこのような片側乳房発育不全に対する再建で問題となるのは、皮下軟部組織のボリュームを補うことはできても皮膚が不足するため必然的に乳頭の位置が健側より高位になることです。が、長期的にみれば、バッグ自体にある程度のティッシュ・エキスパンジョン効果があり、乳頭位置の不均衡はある程度改善されます。
実際にこの症例においても、術後1週間では左右差が認められましたが、術後3ヶ月でかなりの改善がみられ、ご本人も非常に喜んでおられました(図2,3)。


図2


図3

上記の方法では、術中麻酔は静脈麻酔と硬膜外麻酔あるいは局所麻酔の併用で充分な鎮静・鎮痛効果が得られ、術後通院処置は要すものの入院の必要はなく、日帰り手術が可能な範囲の手術侵襲で済みます。

一般の形成外科や再建外科では、入院設備を完備し、先天疾患であるということから、大きな傷の残ることや数回の追加手術を前提として治療計画を立てることについては、ある程度当然のこととされ、患者様側の立場をあまり考慮しない、負担のかかる治療が行われがちですが、症例によっては、上記のように比較的負担の少ない方法で改善する場合もありますので、ぜひ一度当院のように形成外科の技術をベースに持ちかつ美容外科的な整容面を重視したセンス・治療に従事しているクリニックに一度ご相談ください。